
肘の痛みをくり返さないために知っておきたいこと
「キッチンでお鍋を持ち上げた瞬間、肘のあたりに『ズキッ』とした痛み…」
「それ以来、腕を上げる角度や手首の向きによって、力が抜けてしまうようになった」
実はこのようなお困りは、40〜50代の女性にとても多い症状です。
調理や家事など日常生活の中で、肘まわりに“じわじわ”と負担が積み重なっているなか、
些細な負荷や、ちょっとした関節の角度のちがいなどが引き金になり、激しい痛みを伴うケースがほとんどです。
そしてこの痛みには、
手や腕を動かす筋肉の「インナー(内側)」と「アウター(外側)」のバランスの崩れが深く関係しています。
今回のブログでは、肘の外側に感じるつらい痛みの原因と、対策及びセルフケアについてお伝えしています。
特に対策とセルフケアについては、画像を多めに用意し、わかりやすくしています。
ブログをご覧いただくことで、今お困りの症状や痛みへの恐怖心を解消できる可能性がグンッと高まります。
ぜひ最後までご覧いただき、お役に立てていただければ幸いです。
肘の痛みに関係するインナーマッスルとアウターマッスルの役割
こんにちは。
愛媛県西条市で、いしだ鍼灸整骨院を開業しています、院長の石田将太郎です。
早速ですが、私たちの手や腕は、2つの筋肉グループが連携して動いています。
この2つの筋肉は、建物でいえば 「骨組みと外壁」 の関係です。
①インナーマッスル:内在筋(ないざいきん)
腕や手のひらの奥にある小さな筋肉群で、物を握るときや肘の曲げ伸ばしの際に「支点」をつくる役割。
建物なら骨組みや基礎など、土台のような役目です。


②アウターマッスル:伸筋(しんきん)・屈筋(くっきん)
肘の骨(上腕骨)から始まり、前腕を通って手や指の骨をむすぶ。手首や指を動かす筋肉。
実際に「持ち上げる」「支える」といった”見える動き”を司る主役です。
建物で表すなら、外壁や柱、屋根といったイメージです。

この2つの筋肉は密接に関係し合っており、
インナー(骨組み)がしっかりしていれば、アウター(外壁)は余計な力を使わずに安定します。
身体では、インナーマッスルが弱ったままアウターマッスルだけで支えようとすると、
どこか一部に力が集中し、例えば肘や手首、指先など、体の末端に痛みが出るようになていきます。
痛みに直結している伸筋と屈筋はアウターマッスルに分類
肘から始まる「伸筋」と「屈筋」は、物を持ち上げるときに一番強く働くアウターマッスルです。
伸筋:肘の外側に位置し、手首を反らす(背屈)働き
屈筋:肘の内側に位置し、手首を曲げる(底屈)働き

お鍋を持ち上げるような動作では、伸筋に特に強い負荷がかかります。
もし手首の角度が悪い状態(たとえば尺屈:しゃっくつ=手首が小指側に倒れた状態)で持ち上げると、
伸筋にねじれの力が加わり、肘の外側に過剰なストレスが集中して「ズキッ」と痛みが出ます。
「ズキッ」という肘の外側の痛みの正体は“テニス肘”と同じメカニズム
実はこの肘の外側の痛み、いわゆる 「テニス肘(外側上顆炎)」 と同じメカニズムです。
テニス肘という名前のとおり、ラケットを振る動作でも同じように肘の外側にストレスが加わるため、
炎症や微細な損傷が起こりやすい場所です。
ですが、実際にはテニスをしていなくても、この症状は多くの方に起こります。
たとえば――
・お鍋やフライパンを持ち上げる
・ペットボトルのキャップを開ける
・濡れたタオルをしぼる
・高い所に手を届かせた先で指先を操作する
・買い物袋を一度にたくさん肘に掛ける
・買っているペットを抱き上げる
このような「日常の何気ない動き」でも、伸筋に大きな負担がかかり、テニス肘と同じ状態になることがあるのです。
特に40〜50代の女性に多くみられ、「テニスをしたわけじゃないのに…」と驚かれる方も少なくありません。
また、「お鍋を持ち上げたときの肘の痛み」は、テニス肘の初期サインであることも珍しくないのです。

手首の角度と握り方を変えるだけで肘の負担は激減
肘への負担を減らすためには、取手を持つときの手首のポジションが重要
まずは以下の2つについて、特にお鍋などの取手を持ち上げる際に意識してください。
①手首の尺屈(しゃっくつ:小指側に曲げる動き)を防ぐために手首をやや外側に捻っておく
②指先ではなく、手のひらや指の根元からしっかり握り込む
この2つを意識するだけでも、力の伝わり方が変わります。

指先主導で持ち上げると手首が尺屈しやすく、さらには肘まわりの伸筋群に負荷が集中します。
対策として、手の根元→手のひら全体→指の根元→指先、という順番で握っていくようにすると、
肩周り・体幹・背中の筋肉も連動し、肘にかかる負担を分散することができます。
作業の流れに任せずに「ワンクッション」を
調理中は、つい流れのままに持ち上げてしまいがちです。
ですが、痛みがあるときほど上記①②を意識し、「持ち上げる前の工程」を丁寧に行うことがとても大切です。


・手首付近(手のひらの根元)から密着させていき、指先が触れるのは最後になるように握りの順序を意識する
・順序を意識し、しっかりと握り込みをしてから持ち上げる
・手首の尺屈をできる限り防ぐ

これらをワンクッションとして入れるだけで、肘の負担は大きく減ります。
急いでいるときほど、意識的に行ってみてください。
肘の外側上顆炎|なぜ屈筋と内在筋のケアが必要なのか
痛みの主役が「伸筋」にあるように感じても、伸筋だけをケアしていては根本的な解決にはなりません。
その背景には、屈筋とのバランス関係、そして、内在筋(インナー)の機能状態が大きく関係しているからです。
伸筋と屈筋は「シーソー」の関係
伸筋が過剰に働いているとき、反対側の屈筋が硬く短くなっていることが多いです。
屈筋が硬いままだと、手首を中立(親指が真上を向く位置)に保つことが難しくなり、
結果的に伸筋に余計な負担がかかります。
つまり、屈筋を緩めることは、伸筋を守ることにつながります。
内在筋は“力の支点”
さらに重要なのが手の内在筋(インナーマッスル)。
内在筋は支点の役割を果たし、外側(アウターマッスル)のつく伸筋・屈筋の働きを安定させます。
ここが弱っていると、肘まわりの筋肉に負担が集中しやすくなり、痛みが長引いたり再発したりしやすくなります。

肘の外側の痛みのセルフケア|インナーとアウターを整える3ステップ
ここからは、突然の肘の痛みや、痛んだあとから肘や腕の位置によって力が入らなくなる、
そういったお困りに対するセルフケアをお伝えしていきます。
① 伸筋のストレッチ(手の甲側のケア)
お鍋を持ち上げたときに一番頑張っているのが、肘の外側にある伸筋群です。
ここが硬くなると、ちょっとした角度で「ズキッ」と痛みが出たり、腕に力が入りにくくなったりします。
〈ストレッチの手順〉

・肘を正面に向かってまっすぐに伸ばす
・手のひらを下に向け、反対の手で指先を軽くつかみ、自分の体の方へゆっくり引き寄せる
・肘から先を、体から引き離すようなイメージで前方へ押し出していく
・手首を左右にゆっくりと動かしながら、特にストレッチを感じる場所を入念に行う

実施回数は20秒キープ × 2〜3セットを目安にしてください。
どちらかと言うと手首に痛みや辛さを感じやすいと思いますので、痛気持ちいいぐらいの加減で行いましょう。
グッグッと反動をつけるような弾き方はNGです。ジワーッと伸ばしてあげてくださいね。
繰り返すようですが、決して強く引っ張る必要はありません。
「痛気持ちいい」と感じるくらいで十分です。
② 屈筋のストレッチ(手のひら側のケア)
屈筋は、手首を曲げるときに働く筋肉です。
日常生活では頻繁に使われるため、知らないうちに筋肉疲労によってこわばっている方も多いです。
〈ストレッチの手順〉

・肘をまっすぐに伸ばします
・手のひらを上に向け、反対の手で指先を自分の方へゆっくり引きます
・さらに小指と薬指、人差し指と中指の2本ずつを引くようにします
こちらも20秒キープ × 2〜3セットを目安に行いましょう。
屈筋がやわらかくなると、手首を中立位に保ちやすくなり、伸筋にかかる負担を大きく減らすことができます。
③ 内在筋(インナーマッスル)の活性
〈刺激方法の手順〉

・指をそろえてまっすぐに伸ばします
・指の「付け根の関節」だけを曲げていきます(指まっすぐ、手首まっすぐ、指の付け根だけ直角に)
その状態で10秒キープを3〜5セット行いましょう。
指先ではなく、手のひらの奥から動かす感覚を意識してください。
活性させる効果もさることながら、インナーマッスルのトレーニングも担います。
ですから、負荷としてはしんどさを感じるぐらいでも心配ありません。
この感覚がつかめると、手だけでなく腕から肩甲骨、さらには体全体で力を伝えられるようになり、
肘の負担がグッと軽くなります。
インナーマッスルとアウターマッスルの関係をイメージで理解する
インナーとアウターの関係性は人体だけに存在しているわけではなく、
あらゆる構造の中に見出すことができます。
例えば以下のようなイメージです。
・建物
→インナーが「骨組み」、アウターが「外壁」。骨組みが弱ければ外壁にヒビが入る。
・オーケストラ
→ インナーが「指揮者」、アウターが「演奏者」。指揮者がいないと演奏がバラバラになる。
・車
→ インナーが「車軸」、アウターが「タイヤ」。軸がズレればタイヤが早く摩耗する。
このようなイメージを持つと、「なぜ内在筋を鍛えることが肘の痛み予防につながるのか」が理解できると思います。
伸筋と屈筋のバランス、そして内在筋(インナーマッスル)による伸筋と屈筋のサポート、
関係性が充実していくと、肘の外側に集中する負担が分散され、痛みが軽減されていきます。

まとめ|テニス肘や外側上顆炎は痛い場所だけを見ない
ここまでゴラに忠記ありがとうございます。
今回のブログでは、家事をはじめ日常生活の中で女性の方々がお困りになりやすい肘の痛み、
特に肘の外側上顆炎や、テニスをしていないのに起きてしまうテニス肘について、
原因と解消につながるセルフケアをお伝えさせていただきました。
お鍋を持ち上げたときの「ズキッ」という痛み、その後、肘や腕に力が入らなくなった、という状態は、
・伸筋と屈筋(アウター)のアンバランス
・内在筋(インナー)の筋力低下や不活性
・手首の角度の崩れ
・テニス肘と同じ炎症のメカニズム
これらが重なって生まれるものと捉えていただいても過言ではありません。
見えるところ(アウター)だけに注目するのではなく、“奥にあるインナー”を整えることも、
痛みを根本から減らし、再発を防ぐための第一歩でもあります。
焦らず、やさしく、自分の体を守るための“持ち方”と“筋肉の連携”を整えていきましょう。
痛みが長引くときは、専門的な施術を取り入れることで、さらに早い改善も可能です。
反対に、痛みのある場所を無闇に触る行為や、マッサージ屋さんに行って刺激してもらうことは、
返って状態を悪化させる可能性が高いため注意が必要です。
また、痛みの確認のために、何度も痛む動作を繰り返すことも控えるようにしてください。
傷口にできた瘡蓋(かさぶた)をはがす行為と一緒で、傷んだ筋肉の修復を妨げるように働きます。
当院でも肘の外側の痛み、外側上顆炎、テニス肘(ゴルフ肘)には、高い専門性を持ってご対応いたします。
お困りになられていましたら、お気軽にご相談くださいね。
今回のブログは以上となります。
このブログが肘の不調にお悩みのあなたを救う記事となっていることを願います。
最後までご覧いただきありがとうござました。

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